「多頭飼い崩壊」という言葉を聞いたことがありますか?飼い主が出かけるとき、愛猫がひとりぼっちで留守番するのはかわいそう…。などの理由で、猫を多頭飼いする人は多いでしょう。しかし、あらかじめ正しい知識を持っていないと、猫にも人にも害となる「多頭飼い崩壊」を招く恐れがあります。
本記事では猫の多頭飼い崩壊についての知識と、崩壊を防ぐ方法を説明していきます。飼い主として必要な予備知識を身につけて、愛猫をしっかり守ってあげましょう。
目次
猫の多頭飼い崩壊とは?
「多頭飼い」とは猫を一度に複数匹飼うこと。「多頭飼い崩壊」とは手術をしていない猫が妊娠・出産し、飼い主の手に負えないほどふえすぎてしまった状態のことを言います。
猫がたくさんいるなんて可愛い!なんて悠長なことを言っている場合ではありません…。どんな害となるか、原因は何なのか。多頭飼いを決める前に覚えておいてくださいね。
崩壊するとどうなる?
まずは、実際の事例を紹介します。
動画では、たった1頭の飼い猫が、5年で90頭にまでふえてしまったと言います。部屋の壁や柱はひっかき傷でボロボロ。家中が糞とおしっこの匂いで充満し、足の踏み場もありません。テーブルで食事を広げると猫たちに食べられてしまうので、玄関で食べるしかなくなってしまったそうです。
相当なお金持ちでもなければ、猫たち全ての手術をすることもできません。餌代も馬鹿にならないでしょう。飼い主自身も普通の生活ができなくなってしまいます。
崩壊の原因は猫の繁殖力の高さ
多頭飼い崩壊の一番の原因は、飼い始めてすぐに手術をしなかったためです。繁殖能力を持ったメス猫は驚くほどのスピードで子孫をふやしていきます。
【1年で出産できる回数】1~2回
子供たちが成長して繁殖能力を持つと、子供同士、親子同士で交配して、妊娠・出産。最初は1頭だったメス猫が、2頭、3頭とふえていきます。もし、3頭がそれぞれ出産したとしたら、「3×子猫の数4~6=12~18頭」…。
出産が1年に1回とは限りません。2回出産をしたとしたら、「12~18頭×2回=24~36頭」!この計算は例えばの話ですが、あり得ないことではありません。自分で飼えなくなるばかりか、引き取り手を探すのにも苦労するでしょう。
猫を飼う人は、猫の繁殖力の高さをしっかり認識する必要があります。
多頭飼い崩壊しないために知っておくべき!猫の繁殖について
多頭飼い崩壊を起こさないために必要な猫の繁殖についての知識を身につけましょう。そして、飼い主としての責任の重さを再確認してもらえたら嬉しいです。
発情期はいつくる?
うまれて初めての発情は生後4~6ヶ月頃です。そして年に2~3回周期的に発情します。というのは自然界での猫の話で、室内飼いの猫には当てはまらないこともあります。
メス猫の発情期に大きな影響を与えるのは日照時間です。子育てしやすい春から夏にかけて出産できるよう、日が長く暖かい季節に発情期を迎えます。ところが、室内飼いのメス猫の場合、飼い主が起きている間は照明がついていて明るい時間が長いので、一年中発情しやすい状態になります。このことも多頭飼い崩壊の一因となっているのでしょう。
オス猫はというと、メス猫の発情の声を聞いて発情するので、季節に関係ありません。
交尾にかかる時間はどれくらい?
猫の交尾はものの数秒で終わり、それを何度も繰り返します。メス猫は交尾の刺激によって排卵するので、妊娠する確率は90%以上。「交尾しようとしたら止めに入ろう」「たった1日外に出ただけなら大丈夫だろう」は甘い考えといえるでしょう。気がついたときにはすでに数回目かもしれません。たった1日でも、発情期のメス猫は大きな声とフェロモンでオス猫を呼び寄せます。出会ってしまったら、ほとんど確実に妊娠に至ります。
メス猫が妊娠する確率の高さを知っておくことも、多頭飼い崩壊を防ぐポイントです。
妊娠期間はどれくらい?
猫の妊娠期間は約60日です。たった2ヶ月という短い期間で出産するということも、多頭飼い崩壊を招く理由といえます。「ちょっと太ってきたかな?」と思うと、すでに妊娠後期に入っていることも珍しくありません。上から見てもおなかが丸く大きくなり、乳首が大きく目立つようになります。
もし愛猫が妊娠しているようだと思ったら、病院に連れて行ってあげましょう。多頭飼いで望まない出産を迎えた場合、飼い主は検診の費用を払えなくなったり、非難されたくなくて隠したりすることがあります。
出産後の発情期はいつ頃くる?
出産を終えたメス猫は子猫が乳離れをしたら、発情して次の妊娠ができるようになります。子猫の乳離れは生後2ヶ月頃です。妊娠期間2ヶ月+子猫の離乳に2ヶ月、早くて4ヶ月後にはまた妊娠する可能性があります。
もし多頭飼いでオス猫も一緒に暮らしていたとしたら、オス猫は子猫を殺してしまうかもしれません。子猫を失い、母乳をあげる必要がなくなったメス猫は、すぐにまた発情してオス猫を受け入れられるようになるからです。せっかく可愛い子猫がうまれたのであれば、しっかり守ってあげたいですね。できないのであれば、多頭飼いはやめておいた方が猫のためです。
多頭飼い崩壊を防ぐための重要なポイント
猫の繁殖について詳しく知ることで、多頭飼い崩壊のプロセスがわかってきました。多頭飼い崩壊を防ぐために重要なのは、「猫のために自分ができる範囲をしっかり見極めること」。では、自分にできる範囲とは?
手術できる数だけを迎え入れること
多頭飼い崩壊を招かないためには、迎え入れる猫に手術を受けさせることです。そして当然、手術にはお金がかかります。
【オス猫の去勢手術費用】15,000~20,000円
※上記は相場です。病院によって違いますので事前に確認してください
外に出さないこと
メス猫が外に出ると、妊娠の可能性もありますし、交通事故にあう可能性もあります。妊娠、出産の病院代は払えますか?交通事故にあった場合、治療費を出せますか?リスクを減らすためには外に出さないことが大事です。
そして、外に出さないようにできるかどうかも飼い主にかかっています。猫が自分で開けられるような玄関ドアや窓なら、出ていかないような工夫が必要になりますね。手に余る多頭飼いでは、飼い主が出かける隙をついて玄関ドアのすき間から脱走をはかられる…ということもあるかもしれません。脱走を防ぐには、廊下や階段などに設置するゲートの購入を検討するのも良いでしょう。
外に出さないための対策にお金と労力をかけられるかどうかも、考えてほしいポイントです。
本当にかわいそうなのはどっち?多頭飼い崩壊を防ぎ愛猫と幸せな毎日を送ろう
捨て猫や野良猫を見かけたら、かわいそうでつい連れてきてしまう…。という人もいるでしょう。多頭飼いは悪いことではありません。ただ、費用の面、環境の面で自分に可能なのかどうかをしっかり踏まえた上で行動してくださいね。
捨てられていたらかわいそう?多頭飼い崩壊で劣悪な環境に押し込められるのもかわいそうですよね。ちゃんと飼い主としての役目を果たせる範囲を自覚して、自分も猫も幸せな日々を送りましょう。